史跡指定とは?

  史跡指定とは?

  文化財保護法では、貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅などの遺跡のうち重要なものを史跡として指定することができると規定している。又、史跡の中で特に重要なものは特別史跡として保護することができる。

  指定は、地方公共団体の要請を受けた文化庁の判断に基づき、文部科学大臣から文化審議会文化財部会に諮問する。

  答申の結果が官報に告示され、所有者に通知されたときから効力をもつ。

  指定前において緊急の必要がある場合には、都道府県教育委員会の権限で仮指定を行うことができ、この効力は文部科学大臣による指定と同じであるが、2年以内に文部科学大臣による指定が無い場合は効力を失う。

  史跡指定は、土地の私有権と直接接触することが多い。保護法では所有者の同意を義務付けてはいないが、同意なしに指定を急いだために審議会の答申語、告示のできない物件が多くある。そのため、運用上、同意を前提とするようになってきている。

  又、指定後も、私権に対する制約が強いため、財産権の尊重と公共利益との調整などに問題が多く、有効な活用を図るためには、結局、土地を買収して史跡公園として整備するしかない。しかし、国の買収予算があまりにも貧弱な上、土地価格の高騰の影響をうけ、積極的な指定による保存が困難になっている。

  一つの解決策として、地方公共団体やその委託を受けた土地開発公社による先行取得方式が採用されているが、これも既に後年度負担分が予算の大半を占める状態になっている。

  地方公共団体単位の文化財保護条例に基づく指定においては、一層事態が深刻である。

  実際、指定にまで持ち込まれた遺跡のうちの多くが粘り強い保存運動の結果であることも、こういった事態が背景にある。

  指定後の管理は、所有者がはっきりしない場合や管理責任者が不適当な場合は、地方公共団体やその他の法人を管理団体に決めて行うことになっている。しかし、管理費用は特別な場合を除き、すべて管理団体負担になっており、また整備には国の補助があるものの、史跡管理と整備は永久的な事業のため、これに伴う人員、予算などの体制維持にかかる負担が大きい。

  折角、指定された史跡が草の生えるままにまかされていることへの市民からの批判もあり、近年は、積極的な整備活用を図ることで新たな方向を探ろうとする動きが強まっている。

  それにしても、十分な予算を確保することが史跡指定促進の前提である。

(田辺 征夫 奈良文化財研究所 新版「遺跡保存の事典」平凡社)