苫小牧市

苫小牧市 とまこまいし 北海道南西部、太平洋に面し、札幌市の南約60kmにある工業都市。市街地の北西には、樽前山(たるまえさん)やカルデラ湖の支笏湖があり、東には勇払原野が広がる。気候は比較的温暖で、冬は降雪が少なく-15°C以下になることはまれである。1948(昭和23)市制施行。面積は561.10km2(一部境界未定)。人口は172022(2003)

道内では札幌につぐ工業都市。1910(明治43)に豊かな水と森林資源を背景に、王子製紙が操業をはじめて以来、紙やパルプ工業を中心に発展してきた。掘り込み港として建設されていた苫小牧港の利用が63(昭和38)に開始されると、アルミ、石油精製、電力、化学などの工場が進出し、北海道の中心工業都市として着実に進展してきた。

また、未開であった東部の勇払原野では、国家プロジェクトとして苫東(とまとう)工業地域が開発されている。平坦地で用水が豊富なうえ、新千歳空港から15kmというめぐまれた立地条件にあり、火力発電所、石油備蓄基地、各種工場が進出している。1984年と92(平成4)にいすゞ自動車とトヨタ自動車が進出して、自動車の町としても成長している。1989年には道央テクノポリスに指定された。

スケートの町としても知られ、スピードスケートとアイスホッケーが盛ん。とくにアイスホッケーは実業団チーム以外にも市内に100をこすチームがある。日本ではめずらしいオートリゾートが1992年にオープン。また、勇払原野にあるウトナイ湖はハクチョウの飛来する楽園で、ラムサール条約に登録されている。

白老町 しらおいちょう 北海道南西部、白老郡の町。胆振(いぶり)支庁に属し、東は苫小牧市、西は登別市に接する。アイヌのコタンと製紙で知られる。JR室蘭本線と国道36号が海岸線沿いに町を貫通している。1954(昭和29)町制施行。面積は425.75km2。人口は21909(2003)

主産業は畑作農業と畜産業で、ジャガイモ・肉牛・鶏卵・シイタケなどを産する。馬の飼育頭数も多く、社台牧場などがあり競走馬の産地としても知られる。太平洋沿岸では漁業がおこなわれ、スケトウダラ・ケガニ・サケなどの水揚げがあるが、小規模で漁獲量も多くはない。北西部の山岳地帯では良質のエゾマツ・トドマツを産出し、これらは紙の原料として着目され、大昭和製紙の白老工場が進出している。ほかにも旭化成などの大工場が立地し、苫小牧から室蘭にかけての工業地帯の一角を占める。

アイヌと開拓民の文化と歴史の保存につとめ、仙台藩陣屋跡・白老ポロトアイヌコタン・白老民俗資料館などは観光名所となっている。

江戸時代白老川下流域には松前藩によって白老場所(交易所)がおかれていた( 蝦夷地交易)1855(安政2)仙台藩が陣屋をおいたことから、和人(本州系日本人)が多くすむようになり、72(明治5)に開拓使出張所が設置され、本州からの開拓移民が増加した。

ウトナイ湖 ウトナイこ 北海道南西部の苫小牧市にあり、勇払平野の泥炭湿地内にのこされた海跡湖。面積2.30km2、湖面標高3m、最大水深0.8mの淡水湖で、透明度0.8mの中栄養湖とされる。アイヌ語ではウトナイトー(トーは「沼」の意)で、直訳してウトナイ沼ともよばれる。

支笏湖 しこつこ 北海道西部、千歳市の西端にあるカルデラ湖。支笏洞爺国立公園内にあり、田沢湖についで日本第2の深さをもつ。面積78.76km2、最大水深363m、水面標高250m

樽前(たるまえ)山、恵庭(えにわ)岳などの支笏火山群の山々が湖岸にせまり、原始的景観をもつ。冬季も凍結せず、洞爺湖とともに日本の不凍湖の北限となっている。

1894(明治27)に阿寒湖からヒメマスを移殖し、人工孵化(ふか)により繁殖させた。これはアイヌ語カパチェップの略称チップの名で親しまれ、68月の解禁期にはチップ釣りでにぎわう。また、周辺にはヒメマス料理をだす食堂や旅館がたちならぶ。丸駒温泉やオコタン温泉のほか、大規模なキャンプ場、公営ユースホステルなども付近にあり、東畔には遊歩道、テニスコートなどが整備された国民休暇村がある。

支笏湖

支笏湖は、北東を恵庭岳(えにわだけ)、南東を風不死岳(ふっぷしだけ)にはさまれた繭(まゆ)形のカルデラ湖である。周囲は急崖(きゅうがい)で、千歳川の流出口のある東岸に道内有数のモラップキャンプ場など、観光施設が集中している。写真正面にみえる山は風不死岳()と、溶岩ドームをいただく三重式火山の樽前山。

カルデラ Caldera 火山の大きさにくらべてきわめて大きな火口状のくぼ地。一般に直径1km以上のものをさす。語源はスペイン語の大鍋に由来する。平面の形はほぼ円形か楕円形で、内側の壁は急な崖(がけ)で火山の構成物質がみられる。

カルデラは、大爆発が古い火口を破壊した場合、また、大量の火砕物質を噴出したためにマグマ溜(だま)りに空洞が生じて火山の中央部が沈下した場合にできる。前者を爆発カルデラといい、磐梯、鳥海、三宅島などの例がある。後者は陥没カルデラといい、屈斜路、摩周、十和田、箱根、阿蘇、姶良(あいら)、キラウエア(ハワイ)などの例がある。その大きいものは直径20km以上、カルデラ底の深さは400m以上に達する。とくに阿蘇カルデラは直径が1725kmもあり、世界有数のカルデラである。

カルデラの内部には水がたまって湖(カルデラ湖)や湾になる場合もあり、また、その後に新しい火山を噴出して中央火口丘が生まれ複式火山となるものもある。洞爺カルデラの中島、阿蘇の中岳・高岳、姶良の桜島などがその例である。

支笏洞爺国立公園 しこつとうやこくりつこうえん 北海道南西部、石狩、胆振(いぶり)、後志(しりべし)3支庁にまたがる国立公園。さまざまな種類の火山地形を主体に、支笏湖とその一帯の温泉群、有珠山と昭和新山をふくむ洞爺湖周辺、羊蹄山の3地域からなる。1949(昭和24)に国立公園に指定された。面積は993.02km2。

有珠山 うすざん 北海道南西部、洞爺湖(とうやこ)の南にある火山。洞爺カルデラの一部をなす小型の成層火山で、標高は732m。過去300余年間に8回の噴火をおこしている活火山である。支笏洞爺国立公園の一角を占める。

昭和新山 しょうわしんざん 北海道南西部、洞爺湖の南岸にある火山。標高398m。西にある有珠山の寄生火山である。支笏洞爺国立公園にふくまれる山全体が国の特別天然記念物に指定されている。

洞爺湖 とうやこ 北海道西部、羊蹄山の南方にあるカルデラ湖。ほぼ円形で、湖の中央に中島(中央火口丘)がうかぶ特徴ある形をしている。支笏洞爺国立公園にふくまれる。面積70.44km2、最大水深180m、水面標高84m

支笏湖とともに日本の不凍湖の北限となっている。大きな流入河川が少ないため透明度は10mに達する。周囲はなだらかな丘陵がつらなり、中島は緑こい森におおわれ、エゾシカが生息している。

道内随一の景勝地として知られるが、とくに南岸から湖水ごしに中島と羊蹄山(蝦夷富士)をのぞむ雄大な景観はすばらしい。また湖岸の有珠山や昭和新山などが変化にとんだ景色をつくりだす。湖畔にはキャンプ場が多く、南岸の洞爺湖温泉には近代的な設備をもつホテルを中心に温泉街が発達し、観光の拠点になっているが、2000331日からの有珠山の噴火により大きな被害をうけた。

羊蹄山 ようていざん 北海道西部、札幌市の南西にある火山。後志支庁(しりべししちょう)の倶知安町、ニセコ町、真狩村、喜茂別町、京極町の境界に位置する。標高1898m。南東の尻別岳(しりべつだけ。1107m)、南西の昆布岳(1045m)などとともに羊蹄火山群を構成する。秀麗な山容から蝦夷富士(えぞふじ)とよばれる。支笏洞爺国立公園の一角を占める。